神経のアンチエイジングで「コグニ」と戦う

スポンサーリンク
スポンサーリンク

神経のアンチエイジングで「コグニ」と戦う

神経細胞は他の細胞と異なり、胎児期に作られると生涯ほとんど分裂せずに生きる寿命の長い細胞です。しかし、30歳を過ぎると1日に10万個以上の神経細胞が死滅して、その数は減っていきます。

神経細胞が死ぬ大きな原因は、糖化ストレスなどによってできた老廃物が細胞内に蓄積することです。また、心身ストレスが過多になることも細胞死の原因になります。神経細胞が死んで、神経ネットワークが壊れていくと、重い認知症になりかねません。神経ネットワークは長い間の経験の積み重ねで作られますから、ネットワークが広範囲に壊れてしまった認知症の治療は極めて困難です。

今回は「Dr.米井のアンチエイジング・セルフチェック」で「神経年齢」をチェックして読み進めてください。神経の老化も、早めに兆候を見つけて、予防することが大切です。

「コグニ」の三つのタイプ

せっかく体が丈夫であっても、神経ネットワークが壊れて脳神経システムに狂いが生じると快適な生活が送れなくなってしまいます。認知症とは、記憶や思考、理解力、判断力、言語能力などの認知機能の障害です。認知機能は英語でコグニティブファンクションと言うので、私は認知症のことを「コグニ」と呼ぶことにしています(「認知症」というと手も足も出ない感じがするかもしれませんが、「コグニ」ならば弱そうな感じで、簡単にやっつけられる気になるでしょう)。

コグニは、アルツハイマー型、脳血管型、レビー小体型の大きく三つに分けられます。アルツハイマー型と脳血管型が大部分を占めるといわれますが、三つが混在することが多く、臨床的には区別はつきにくいのが実状です。

アルツハイマー型の原因は、たんぱく質「アミロイドβ」や「タウ」が脳内に異常に蓄積することです。予防方法の一つは、アミロイドβやタウに、ブドウ糖(グルコース)や脂質由来アルデヒドが直接結合して糖化するのを防ぐことです。脳血管型の予防には血管年齢を若く健康に保つことが重要です。レビー小体型については、まだよく分かっていません。

神経は使わないと老化しやすくなる

では具体的に何をすればいいのでしょう。神経は使わないとなまって老化しやすくなるので、コグニ予防としてはとにかく神経を使うことが原則です。

国立長寿医療研究センターはコグニ予防のために、運動(エクササイズ)と認知課題(計算、しりとりなど)を組み合わせた「コグニサイズ」を提唱しています。コグニサイズで紹介されているやり方でなくても、全身運動と細かい手作業の両方を実践すると良いでしょう。細かい手作業というのはゲーム、楽器演奏、絵画、習字、写経、編み物、模型作りなど。そして報酬があるとさらに効果的です。

報酬はお金に限ったものではありません。いわば自分へのご褒美。1カ月間、何かを頑張った自分を褒めたたえることです。買い物に行く、旅行に行く、ごちそうをいただくなど、励みになればなんでも良いのです。

努力と報酬については、脳内から分泌されるセロトニンやドーパミンといった「報酬系ホルモン」が関係します。1カ月の努力の期間中は多くのセロトニンが分泌されるため、セロトニン神経が活発化します。そして、良いタイミングで報酬があるとドーパミン神経が活発化してドーパミンが放出され、うれしくて良い気分になるのです。ここで大切なのは、セロトニンが少ないとドーパミンが出にくくなること。両方の神経を活発化させるためには、努力もせずに報酬ばかりおねだりしてはいけません。

生きる目標を持つ

神経の老化予防に大切なのは生きる目標を持つことです。「いつまでも若く美しくありたい」「趣味のダンスを続けるぞ」「絶対にぼけないぞ」「80歳でもゴルフをやるぞ」「90歳でも旅行にいくぞ」と具体的に設定するのがポイント。女性は仕事をもたなくても、割合に生きる目標を見つけるのが上手なようです。一方で男性は、あまり上手ではない人も多いので、定年になっても隠居せず、できる範囲で身体を動かす仕事を続けると、生きる目標を保つ手助けになるようです。

生きる目標があっても気力がそがれてしまっては意味がありませんので、なんといっても心身ストレスには要注意です。実は、好きなことでも嫌なことでも、行動の一つひとつが全てストレスになります。1日行動したら疲れますよね。これはストレスによるダメージ。ストレスを蓄積させないために、十分な休養と睡眠で疲労回復に務めましょう。

ベットの女性

メラトニンを分泌させて不眠を解消

睡眠は神経のアンチエイジングで重要な要素です。加齢にともなって、寝つきが悪くなる(入眠障害)▽夜中に目が覚める(中途覚醒)▽朝早く起きてしまう(早朝覚醒)--の症状が表れます。

就寝前にぬるめの湯に入ると、神経が静まり寝付きが良くなります。また、高齢期の不眠は「メラトニン」と呼ばれるホルモンの分泌不足が主な原因です。そして、メラトニンが、糖化したたんぱくの分解を助けることも最近分かってきました。起床時に明るい光を浴び、長い昼寝を避け、良い寝具を選ぶなど、メラトニンが分泌されやすい生活を心掛けましょう。

感情バランスを整え、神経年齢を若く

神経年齢を若く保つためには、「喜怒哀楽が豊かで夢と想像力にあふれている」、そんな状態が理想です。大事なことは感情バランスを整えることですが、ストレスが過剰になると感情バランスが乱れます。怒りや悲しみを我慢しすぎるのは問題ですから、時には気心の知れた仲間に「毒」を吐き出すのもいいでしょう。また、心のバランスを整えるための音楽療法も提案されています。

音楽の処方箋

米井嘉一教授が監修し、ビクターエンタテイメントが発売している「アンチエイジングミュージック-音楽の処方箋」。音楽で感情のバランスを整える

「自分はネクラだから、感情バランスを整えるのは難しい」と諦めてしまう人もいるかもしれません。そういう人は、ネアカな人と一緒に過ごしてみてはいかがでしょう。明るいムードメーカーは、世話好きが多いもの。前向きになるための手助けをしてくれるかもしれませんよ。

米井嘉一

同志社大学教授

よねい・よしかず 1958年東京生まれ。慶応義塾大学医学部卒業、同大学大学院医学研究科内科学専攻博士課程修了後、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校留学。89年に帰国し、日本鋼管病院(川崎市)内科、人間ドック脳ドック室部長などを歴任。2005年、日本初の抗加齢医学の研究講座、同志社大学アンチエイジングリサーチセンター教授に就任。08年から同大学大学院生命医科学研究科教授を兼任。日本抗加齢医学会理事、日本人間ドック学会評議員。医師として患者さんに「歳ですから仕方がないですね」という言葉を口にしたくない、という思いから、老化のメカニズムとその診断・治療法の研究を始める。現在は抗加齢医学研究の第一人者として、研究活動に従事しながら、研究成果を世界に発信している。最近の研究テーマは老化の危険因子と糖化ストレス。

スポンサーリンク
スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク
スポンサーリンク