血管年齢を若返らせる |「三育」とは

心臓

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三大死因のうち二つは動脈硬化が原因

 日本人の三大死因はがん、心臓病、脳卒中。がん以外の二つは動脈硬化が原因です。動脈硬化は血管老化の結果、起こります。血管を早い段階から若く健康に保つ努力をすれば、心臓病や脳卒中は確実に減らすことができるでしょう。近年、死因として肺炎の割合が増えているのがその証拠。男性では脳卒中を抜いて、3位に上がってきました。これは血管年齢の老化予防・若返り対策の成果というべきです。

血管の老化は30代から始まる人も多いので、若くても油断は禁物です。初めは自覚症状が少ないので、自分の「血管年齢」を把握すること、特に自分の暦年齢に比べて血管老化の兆候が表れていないか知ることが大切です。

今回も本題に入る前に、「Dr.米井のアンチエイジング・セルフチェック」で、あなたの機能年齢を測ってみてください。そして「血管年齢」の結果を見ながら、読み進めてください。

動脈硬化の危険因子解消が第一歩

水道管にたとえて説明してみましょう。水道管の内腔(ないこう)が50%くらい狭くなって(狭窄<きょうさく>して)も水流はほとんど影響を受けないので、蛇口をひねって水を使っている人はその変化になかなか気づきません。しかし狭窄の度合いが70~80%になると水流の勢いが失われ、さらに狭まるとチョロチョロとした弱い流れになります。つまり「流れの悪さ」に気付いた時には、狭窄は相当進行した状態です。ここまで至ると、何かの拍子に完全に詰まってしまうでしょう。

血管年齢を算出するには「指尖(しせん)加速度脳波計」「脈波伝搬速度計(PWV)」「心臓足首血管指数計(CAVI)」といった機器を組み込んだ「動脈硬化測定装置」を使います。「指尖加速度脳波計」は簡単な検査で、いすに座って息を整え、左手の人さし指を装置に差し入れれば、約1分で測定は終了。簡単、安全な上、検査機器も小型で安価なので、地域検診や企業健診にぜひ取り入れてほしい機器です。

血管年齢を若く保つアンチエイジングの基本は、動脈硬化の危険因子の作用機序を理解し、一つひとつ解消することです。四つの主な危険因子として、糖尿病(糖化ストレス)、高血圧、喫煙(酸化ストレス)、脂質異常症(高LDLコレステロール血症)が知られています。

血管

血管が硬くなる仕組み

その仕組みを詳しく見ると、まずLDLコレステロールが糖尿病や喫煙の影響で、糖化したり、酸化したりすると「修飾コレステロール」となり、血液中のマクロファージがこれを老廃物と認識して貪食(どんしょく=のみ込むこと)します。食べ過ぎてマクロファージが泡だらけになったのが泡沫(ほうまつ)細胞。この細胞が死滅して血管壁にへばりついて血管内にどろどろした「かゆ」のような状態の物質「アテローム(粥状硬化巣)」が形成されます。これがアテローム性動脈硬化です。

一方、高血圧は血管壁に対して強い圧力をかけること(圧負荷)により、血管壁自体の線維化を促します。血管壁にはコラーゲン線維が豊富ですが、糖化によりこの線維が橋を架けるように結合する「架橋形成」が起き、線維同士が固定されて自由に動けなくなります。そして(四大危険因子には含まれていませんが)、血液中にあるアミノ酸の一種「ホモシステイン」が過剰になると、コラーゲン線維の質の低下を招きます。さらに慢性的なカルシウム不足が続くと、骨以外の体の部位に骨と同様の結晶が沈着する「異所性石灰化」があちこちで生じ、血管壁にもカルシウム沈着が生じます。これらが総合的に作用して血管壁の硬化が起こるのです。これらの作用によって血管が広がりにくくなるとともに、血管内皮(血管の内側の壁)が抜け落ちたりはがれたりする部位では血小板が凝集して血栓ができやすくもなります。

動脈硬化はこれらの作用が合わさって起こります。危険因子の中で突出しているものがあれば、それを重点的に是正してください。特に高血圧と糖尿病は疾病として厳格な管理が必要です。糖尿病は糖化ストレスが強い疾患の代表的なものですが、糖尿病ではない人でも普段から糖化ストレスをできるだけ減らすよう心がけることが肝要です。

サプリでたばこの害は減らせる?

そして、喫煙は酸化ストレスを起こす最たるもの、元凶です。酸化ストレスもできるだけ減らすことが肝要ですが、たばこをやめたくないからと言って、たばこを吸いながら、酸化ストレスを軽減する抗酸化サプリメントを摂取するとどうなるでしょうか。サプリメントの材料となる抗酸化物質は、それ自体が酸化されることによって他のものを酸化させにくくする効果(抗酸化作用)を発揮します。そのため、酸化したものが安全であることが前提です。抗酸化サプリメントでよく使われている抗酸化物質、ビタミンEは酸化するとビタミンEラジカルになります。これは比較的安全な部類に属します。それでもたばこをやめずにビタミンE摂取を続けると、過剰になったビタミンEラジカルによる障害が生じます。喫煙者の肺がん発症頻度は、ビタミンE摂取によってかえって悪化することが知られています。

次に、脂質異常症ですが、前述のように高LDLコレステロール血症が一番問題です。適切な血中LDLコレステロールの値については、その人が(1)病気の治療の一環(補助治療)としてコントロールする必要があるのか、(2)健康増進のためにコントロールするのか、によって基準が異なります。

虚血性心疾患(心筋梗塞<こうそく>や狭心症)や脳卒中の既往がある方、頸(けい)動脈エコーでアテロームが重なって硬くなったプラークが厚く形成されていると診断された人は、薬物療法でLDLコレステロールを130mg/dL以下に厳格に管理する必要があります。現在、動脈硬化の兆候がなく、主に健康増進が目的の場合は、もう少し基準を緩めても良いと思います。生活習慣の改善なしに薬物療法に頼り過ぎると新たな健康問題を生じる可能性があり、注意が必要です。

食事療法「食育」の観点では、塩分の過剰摂取、カルシウム摂取不足、糖質過剰摂取に注意する必要があります。ホモシステインを下げるにはビタミンB6、ビタミンB12、葉酸が不足しないように注意しましょう。

運動療法「体育」の観点からの注意点としては、とにかく怠けないこと。運動不足を防ぎ、運動まではできないという人も身体活動量が低下しないように注意しましょう。散歩やウオーキングは有効な有酸素運動です。ウオーキングによって血圧が健常な状態に近づくことがわかっています。血圧が高めの人は下がる方向に、低血圧の人は上がってきて「いい感じ」になります。血圧が高めでも、低めでも大丈夫。このあたりが薬物療法との大きな違いです。

そしてもっとも重要なのは「知育」、すなわち精神心理的手法です。まずは目的意識を持って、やる気を出すこと、これが運動や食事についても実際に行動する原動力になります。ストレス対策、良質な睡眠も「知育」に含まれます。病は気から、血管の若さも気からです。決してなげやりにならないで、あきらめないで、血管を若く健康に保つ努力を続けましょう。

米井嘉一

同志社大学教授

よねい・よしかず 1958年東京生まれ。慶応義塾大学医学部卒業、同大学大学院医学研究科内科学専攻博士課程修了後、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校留学。89年に帰国し、日本鋼管病院(川崎市)内科、人間ドック脳ドック室部長などを歴任。2005年、日本初の抗加齢医学の研究講座、同志社大学アンチエイジングリサーチセンター教授に就任。08年から同大学大学院生命医科学研究科教授を兼任。日本抗加齢医学会理事、日本人間ドック学会評議員。医師として患者さんに「歳ですから仕方がないですね」という言葉を口にしたくない、という思いから、老化のメカニズムとその診断・治療法の研究を始める。現在は抗加齢医学研究の第一人者として、研究活動に従事しながら、研究成果を世界に発信している。最近の研究テーマは老化の危険因子と糖化ストレス。

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